経営の根幹としてのマーケティング

執筆者:喜文康隆2002年8月号

「企業には二つの基本的な機能が存在することになる。すなわちマーケティングとイノベーションである」(P. F. ドラッカー『現代の経営』)     * エンロン、ワールドコムと九〇年代アメリカのエクセレント・カンパニーで立て続けに起きた壮大な粉飾決算事件は、どうやらこの二社にとどまることなく、さらに大きな企業スキャンダルに発展しそうな雲行きである。「今日会計に必要とされている改革に比べるならば、今後二〇年間に想定されるITの進展など何ほどのものでもないとさえいえる」「最近、キャッシュフローが重視されるようになってきたのも、会計の二年生でさえ損益計算書は化粧できるからである」 ドラッカーは近著『ネクスト・ソサエティ』(ダイヤモンド社刊)で、経済・社会が変貌しているなかで、「株式会社」という制度だけが取り残されつつあることを明快に指摘していた。日本にとっての「失われた十年」は、「ニューエコノミー」ともてはやされた勝ち組の米国にとっても、別の意味で「失われた十年」だったことが明らかになりつつある。 しかし、二つの問題は分けて考える必要がある。さもないと、アメリカ型のグローバル・スタンダードの失敗を理由に、日本の政治家や官僚、さらには一部の経営者に、構造改革をやらない口実をあたえてしまうことになりかねない。

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