半導体は、自動車と並ぶ二〇世紀最大の発明の一つであり、その誕生は、まさに電子革命の始まりだった。IT革命も、技術的には半導体の高性能化によってもたらされたものであり、電子革命の一つの支流にすぎない。さらに忘れてならないのは、電子革命が日本の半導体量産技術によって幕を開けたことである。 それを担った先駆者は多いが、中でも図抜けた人たちがいる。半導体産業の歴史をまとめた『日本半導体五〇年史―時代を創った五三七人の証言』(編集・半導体産業新聞)を見ると、個人名が見出しとなった人物が四人いる。元東北大総長で半導体研究の世界的権威である西澤潤一、エサキダイオードの発見でノーベル賞を受賞した江崎玲於奈、そしてあと二人が今回と次回に連続して紹介する、元超LSI技術研究組合共同研究所長の垂井康夫と東北大学教授の大見忠弘である。垂井と大見は、基礎理論だけでなく半導体の製造分野で画期的な業績を残し、二人がいなければ半導体産業は成立しなかったと言っても過言ではない。 八〇年代後半には、汎用型半導体DRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)で、世界市場の九割を占めた日本メーカーは、価格競争に敗退して今やシェアは二割、DRAM事業から撤退を決めるメーカーが出現するまでに凋落した。垂井と大見の二人が、日本の半導体産業の現状と将来をどのように見ているのか。それは、革命の明日に対する先駆者たちの予言だ。

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