まさに異例の財務省人事だった。塩川正十郎財務相が武藤敏郎次官に戦後初の任期三年目に入る続投を命じただけでなく、マクロ経済政策の対外交渉の要である次官級の黒田東彦財務官、さらに主計、主税、理財、関税、国際の主要局長に加え、官房長らまでも留任させたのだ。 この人事をめぐっては、「今年の予算、税制の取り組みは内閣だけでなく日本のターニングポイントになる」という塩川財務相の発言から、「抵抗勢力に対抗して構造改革路線を維持するために改めて忠誠を求めた」との“解説”がされている。同時に、人事凍結によって霞が関での財務省の影響力が高まったとの解釈もある。確かに小泉政権誕生以降、官邸と財務省の密着ぶりは度々批判を浴びてきた。だとすれば、今回の動きによってその構造が、一層強化されたと見るべきなのか。 小泉首相と言えば郵政改革がまず思い浮かぶが、実際の政治経験からすれば厚生大臣に三度就任したことの方が大きい。一方、年間十八兆円規模の社会保障予算は財務省の主戦場だ。主計官僚の中でもこうした主力分野の査定のプロが、実力者として認められる。この厚生担当主計官を三年も務めたのが、現在、総理秘書官を務める丹呉泰健氏。財務省は昨年四月の自民党総裁選投票前に、予想外の小泉優勢が判明した時点から、省内厚生人脈をフル稼働して経済政策を中心に政権運営の青写真を官邸へ持ち込んだのである。

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