「富の再配分」をどう社会に組み込むか?

執筆者:喜文康隆2002年9月号

「もう世俗的な富を集積するのに終止符をうって、それよりもっと真剣な、またもっと困難な仕事である賢明な分配に専心する決意をしたのである」(アンドリュー・カーネギー自伝)     * 資本主義の危機に直面すると、アメリカはこの危機からの脱却を全てに優先させる。 ブッシュ米大統領は七月三十日、不正会計の多発を受けて米上下両院が可決した「企業改革法(サーベンス・オクスリー法)」案に署名し、同法を成立させた。監査法人への監視の強化や証券詐欺の罰則強化などを盛り込んだこの「企業改革法」は、大恐慌時のアメリカが一九三三年、三四年に成立させ、今日に至るまで米国資本主義の根幹を成している証券取引法、証券取引所法に匹敵する重みを持つ。 七月十六、十七日に米上下両院で行なった議会証言で、FRB(米連邦準備制度理事会)議長のグリーンスパンは、エンロン、ワールドコム、タイコなど一連の企業スキャンダルに関して、「感染性の貪欲さ」(infectious greed)という表現を使って経営者を批判した。したたかなグリーンスパンが、この「貪欲さ」は資本主義を前進させるエネルギーともなれば、同時に病ともなりうることを知らないはずはない。

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