赤いポルシェでカジノに行きたい!

執筆者:成毛眞2002年9月号

 昨年、念願のポルシェを手に入れた。カラーは赤。型式は996カレラ4カブリオレ。真っ赤なポルシェで緑の中を駆け抜けるというのが長年の夢だった。山口百恵のファンではないのだが、音楽のもつイメージ定着力はすさまじい。十年以上前から最後に買う車は赤のポルシェと決めていた。ポルシェのオーナーにはソニーの出井会長やスルガ銀行の岡野社長などハンサムな経営者が多いのも魅力だ。車体は赤でも、乗る人の髪はシルバーグレーが似合う車なのだ。 僕はこのポルシェも含め平均的な車ユーザーだった。黄色に黒ライン入りの三菱ミラージュからはじまり、銀色の三菱ギャラン、白のトヨタマーク、黒のベンツ中型セダン、銀色のベンツワゴンなどを乗り継いできた。平均的というのは色選びである。メーカーがカタログで表紙に使う、いわば推奨色の車ばかりを買っている。他人には「個性をもて」などと偉ぶっているわりには、メーカーの思う壺の車選びをしている。 身の回りのモノを見ても、やはり平均的な買い物をしていることに気が付く。本業であったパソコンですらNEC、ソニー、DELLとその当時の売れ筋を買っているし、携帯電話も順調に504iまで逐次買い換えている。本も平積みの台から見るし、スーパーでもお奨めの食材コーナーで足がとまる。昼めし屋でも、本日のメニューからさばの味噌煮などを選ぶ。僕はメーカーや小売店のターゲットとする購買層のど真ん中にいるのだ。まわりの友人達に聞いても答えはほとんど同じ。ついメーカーや小売店に買わされてしまっている。わざわざ、自分にあった特殊な商品を探し回ることは例外でしかない。

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