「NTTの対抗勢力」をキーワードとする二つの「局地戦」が火を噴き、通信業界は暑い夏を迎えた。二つの局地戦とは、インターネット接続業界の最古参、インターネット・イニシアティブ(IIJ)と東京電力系データ通信会社、パワードコムの提携と、日本テレコムをめぐる東京電力と英ボーダフォンの買収交渉である。二つの動きが合流し、最終的に電力会社を核とする通信第二勢力が誕生するかどうかの剣が峰だ。 七月十八日、IIJとパワードコムが突如提携を発表した。両社の提携は将来の統合を視野に入れたもので、電力各社の通信事業との合流も目指すというのが会見の骨子だった。鈴木幸一IIJ社長は、日本のインターネット・ビジネスではカリスマ的存在。一方パワードコムの背後には、NTTに匹敵する電力各社の光ファイバー網がある。さらに、提携に参加するIIJの関連会社には、トヨタ、ソニーといった日本を代表する企業も出資している。気の早いマスコミは関係各社の名を挙げ、NTTの対抗勢力となる新会社の骨格が固まったと囃したてた。 だが、通信業界、電力業界ともに、今回の提携発表を見つめる視線は意外なほど冷たい。 理由の一つは、十八日の会見がIIJにとって株価対策になったことだ。IIJは過去数回にわたり英ケーブル・アンド・ワイヤレス(C&W)に買収を仕掛けられている。七月末にもIIJに対する敵対的TOB(株式公開買い付け)を予定していたが、十八日の提携発表を受けて米ナスダックに公開するIIJ株が急騰。TOB予算を超えてしまった。

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