東京電力の原子力発電所トラブル隠しにより、電力業界では青森県六ヶ所村に建設中の使用済み核燃料再処理工場が「完成後も当分は稼働できない」という懸念が囁かれ始めた。再処理の前提となるプルサーマル計画の実施のメドが東電のトラブル隠しでまったく立たなくなったためだ。 プルサーマルは使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムとウランを混合してつくった燃料を一般の原発(軽水炉)に使う技術だが、実施を計画している各地の原発の地元で了解が得られていなかった。 東電自身、本来なら年内に地元了解を得ての来年スタートを期待していたが、原発の地元である福島、新潟両県の東電不信は手が付けられないほど悪化し、プルサーマル実施は「あと四、五年は無理」(業界関係者)になった。 六ヶ所村の再処理工場は二〇〇五年七月から稼働予定だが、プルサーマルが始まらなければまったく意味のない施設。そもそも稼働自体も青森県の了解が得られない可能性が大きく、総工費二兆千四百億円の再処理工場は「平成の原子力船むつ」になりかねない。

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