「おたくは、日本中の人たちが見ています。大変でしょうが、しっかり再建をなさってください」。八月下旬、経営再建中のダイエーの高木邦夫社長は取引銀行首脳からこんな言葉を掛けられた。 数日後の八月二十九日。その言葉どおりの出来事に高木社長は遭遇することになる。ダイエーの店長やグループ企業の幹部約九百人を集め、上期の総括と下期の経営方針を説明するグループ総会が開かれた際、出席者の中に約五十人の報道関係者もいたからだ。高木社長が壇上に登場するや、テレビカメラ用の強烈なライトが高木社長に容赦なく突き刺さり、カメラのフラッシュが一斉にたかれた。約一時間にわたり高木社長はダイエーの現状や課題を語り続けた。その間、あるカメラは高木社長の表情を追い、別のカメラは真剣に聞き入る出席者の姿も収めようと、会場内の通路を行き来した。主力取引行幹部は「劇場型再建」と表現する。 ダイエーは二〇〇二年八月中間期に、主取引行三行(UFJ銀行、三井住友銀行、みずほコーポレート銀行)から千七百億円の債務免除、二千三百億円の債務の株式化など総額五千二百億円の金融支援を受けた。二〇〇二年二月期にあった連結有利子負債(カード事業を除く)は一兆六千六百億円だったが、金融支援のほかにプランタン銀座の株式売却などの資産売却もあり、この中間期では約四千億円削減され、約一兆二千億円になった模様だ。ダイエーを巡っては経済産業省が産業再生法(産業活力再生特別措置法)の適用申請を促すなど国も後方支援した。まさに国と日本の金融システムをも巻き込んでの再建である。

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