世界遺産ガラパゴスの「再生計画」

執筆者:サリル・トリパシー2002年10月号

三十年の歳月をかけて、ガラパゴス諸島のひとつ、サンチアゴ島から全てのブタが駆逐された。そして今、諸島の希少動物を守るため、ヤギをターゲットに次なる作戦が始まった。[ロンドン発]一八三五年、ガラパゴス諸島に上陸したチャールズ・ダーウィンは、そこに生息する動植物に目を見張った。この諸島は外界から隔絶していたおかげで、独自の生態系を形成していたのだ。もちろん、サンチアゴ島も例外ではなかった。ダーウィンが自然淘汰による進化論を思いつくきっかけとなったガラパゴスゾウガメなど、そこには希少動物があふれていた。一方で、存在しなかったのは家畜だ。 ところが、四十年後には、島を訪れたクックソン司令官によって数匹のブタが目撃されている。一九七〇年代半ばには、野生化したブタは一万九千匹に達し、さらに繁殖する勢いで、島の生態系を深刻に脅かすようになった。特に、ダーウィンが大著『種の起源』を書くため熱心に観察し、ガラパゴスの「顔」ともなったゾウガメにとってブタは大敵だった。世界遺産のガラパゴスに危機が迫った。 ブタの何が問題なのか。ブタは地面に巣を作る鳥の卵だけでなく、ガラパゴスゾウガメやウミガメの卵を食べ、さらに子ガメも食べている可能性が高い。そのうえ、カメたちと同じものを食べて食料を奪ってしまう。実際、サンチアゴ島のゾウガメは徐々に減り、科学者たちは、このままでは絶滅すると警告した。

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