フランス 「天下り・拡大主義経営」の破綻

執筆者:黒田健哉2002年11月号

グローバル化の波に乗って、華やかな名声を享受してきた元高級官僚の経営者たち。しかし、資本効率よりも「規模の拡大」を追求したそのビジネスモデルは「砂上の楼閣」だった。彼らが去っていった後には、膨大な借金の山だけが残されている。[パリ発]フランス経済界を支えてきたエリート支配の構図が、がらがらと崩れ始めた。日本と並ぶと言われた官僚国家を主導した後、主要な企業へと天下っていったENA(国立行政学院)出身の元官僚たち。グローバル化の波に乗って、天下り経営者たちは国際舞台でのフランスの跳躍に一役買ったが、自ら実践者をもって任じた「アングロ・サクソン流経営術」のお手本になり得ないまま、舞台を去り始めている。退場した二人のエナルク経営者「再国有化」「公的資金注入」「分離・分割」――市場でさまざまな再建シナリオがささやかれる仏大手通信会社フランス・テレコム。つい五年前まで絶対安泰とされてきた企業が、いつのまにか多額の負債で身動きが取れなくなった。 政府がフランス・テレコムの株式放出に動きだしたのが一九九七年。独占会社で安心確実な投資先とだれもが見なし、フランスの個人投資家の間に株式投資ブームを巻き起こした。この九〇年代後半は世界で米国の一人勝ちが言われたころ。フランスが「フランス的なもの」から脱却し、企業の競争力を国際水準に引き上げようとの試みが始まった時期であり、左派のジョスパン社会党内閣が株式公開の旗を振った。

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