イギリス 自由化先進国の憂鬱

執筆者:小西太2002年11月号

他の西欧諸国に先駆けてインフラの民営化を進めてきたイギリスに逆風が吹いている。旧国営郵便は赤字を垂れ流し、電力会社と旧国鉄は公的資金の注入を受けた。「自由化による競争促進と効率化」が、常に成功するとは限らない。[ロンドン発]自由化先進国のイギリスが、自由化後遺症に苦しんでいる。株式会社化した旧英国郵便のコンシグニアは、一日当たり百万ポンド(二億円弱)の赤字を垂れ流しながら迷走。成功例とされた電力も、原子力発電大手のブリティッシュ・エナジー(BE)が政府の資金援助を受けた。相次ぐ重大事故の原因を作った鉄道施設管理会社レールトラックは、経営破綻後の再建スキームが固まらない。サッチャー改革から二十年あまり。合理化のしわ寄せとも言える痛みが、英国全土を覆い始めた。郵便、電力、鉄道、それぞれの惨状 二〇〇三年。年が明けると、英国人に「セカンド・ポスト」の愛称で親しまれてきた郵便の午後便サービスが終わる。株式会社化後の初の通期決算となる二〇〇二年三月期、コンシグニアは税引き前損益で十一億ポンドの赤字を計上し、いきなり存続の危機に立たされた。ジョン・ロバーツ社長は年内いっぱいで更迭される。加えて、コスト削減のため、創業以来三百五十年も守り通してきた「一日二便」のサービスを一便に減らす計画を打ち出した。

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