「ごとき不況」に誰がした

執筆者:2002年12月号

「ごとき不況」というそうだ。「竹中平蔵ごときにいいようにされてたまるか」という「ごとき」である。不良債権処理の内容より先に、竹中平蔵という人物への感情的なわだかまりが、この問題をいっそう厄介なものにしている。人間は感情の動物で、その人間が寄り集まってできているのが社会だから、無視できない。 大手銀行のトップを集めた席で金融担当大臣竹中平蔵は「本日は金融改革について意見を伺いたい」と述べるだけで、新聞に報道されている不良債権処理の内容についてまったく明らかにしなかった。「何かご提案があるのかと思っておりましたが」といぶかる銀行のトップに竹中は「いいえ、何もまだ決めておりません」と言ったきり、腕組みしてだまり込んだ。「それでは新聞に報じられていることをもとに申し上げます」と銀行側は反転攻勢に出た。 だまって聞いていた竹中はこう言い放って席を立った。「あなた方は小泉改革に反対する気ですか。それならわかりました。その旨、総理に伝えましょう」「まるで先生にいいつけるぞ、と脅している生徒のようだな」と銀行トップたち。金融界と担当大臣との信頼関係はこの瞬間にまったくなくなった。 竹中は昭和二十六年生まれの五十一歳。一橋大学を出て日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。同行の設備投資研究所を経てハーバードやペンシルバニア大学の客員研究員になる。その後、大蔵省の財政金融研究所に籍を置く。そののち慶応義塾大学総合政策学部の助教授、教授となった。

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