イラクのフセイン大統領には先にアラブの“中立国”への亡命説が飛びかったが、最近になって中東や欧州の情報・外交関係者の間でシリア亡命説が浮上している。 カイロの消息筋がバグダッドからの極秘情報として語ったところによると、フセイン大統領は九月、大統領親衛隊幹部を「密使」として数回にわたってシリアに派遣。最後の密使が帰国後の同月下旬以降、バグダッドの大統領宮殿から大量の金の延べ棒や通信機器が運び出され、シリアへ移送された。この移送作戦の指揮を執っているのはフセイン大統領の後継者とみられる二男のクサイ氏で、同氏は万一に備えた父親のシリア亡命準備であることを側近らに示唆しているという。 クサイ氏が精鋭部隊を率いて移送を行なうトラックの護送の先頭に立っている姿を、イラクとシリア国境で目撃したとの情報もある。しかし、フランスの外交筋は「シリア亡命説」をつかんでいるとしながらも、クサイ氏が陣頭指揮するなど、あまりに目立った行動に疑いを抱いており、「CIA(米中央情報局)工作員らを攪乱するための作戦」との見方も否定していない。

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