竹中平蔵経済財政・金融担当相を軸にした総合デフレ対策がまとまったが、日本経済の行方に対する不透明感はなおぬぐえない。改革への野心が最終局面で削り取られ、薄味の弥縫策に終わったのは誰の目にも明らかだろう。そんな中で、ちまちまと手柄を喜んでいる省庁がある。経済産業省だ。「産業再生のスキームはわれわれの想定したシナリオ通り。財務省や金融庁に任せていたら展望は開けなかった」。デフレ対策決定後、経済産業省の幹部らの多くは満足げに語った。産業再生機構は銀行から債権を引き取り企業の再生を目指す新組織。首相直轄の部隊であり、今回の対策の目玉である。不良債権処理を手がける整理回収機構(RCC)とは別の独自組織として、来春から動き出す予定だ。 金融機能も併せ持つ同機構は数年前にも議論の俎上に載ったことがある。旧経団連が提言したもので、当時の通産省は政府の企業選別は不可能との理由で反対に回った。今回、経産省は首相直属の「産業再生・雇用対策戦略本部」を新設し、その下で企業再生を手がける部隊として同機構を新設する方針に傾き、デフレ対策論議の最終局面で具体像を明らかにした。議論は財務省を軸に進んだが、大筋のスキームは経産省の幹部が書いた経緯があり、霞が関で向かい合う両省の間で手柄を巡る論争が続いている。

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