未曾有のバブル生成と崩壊――流入した巨額の資金が過剰設備と負債に転じ、すべての企業が後始末に奔走している。それでも彼らは未来に絶望しない。失敗から次の変革を生み出すシリコンバレーの強靱な競争力を検証する。[パロアルト発]世界のハイテク産業の中心地である米シリコンバレーが、長い足踏みを続けている。世界的な情報技術(IT)不況や長引く株安を背景に、資金力の乏しい新興企業だけでなく、世界を代表する大手ハイテク企業までもが迷走している。一九九〇年代、人類の歴史上、最も短期間で巨額の富を生み出したハイテク集積地は、果たして甦るのだろうか。「新規株式公開(IPO)を目標に定めるのはやめて、大手企業に買収されるような会社を目指そう」――シリコンバレーに本社を構えるハイテクベンチャー、シンプル・デバイシズのルー・ヒュース最高経営責任者(CEO)は従業員にこう公言する。 シンプル社は九九年の創業で、一般消費者向けインターネット家電の需要拡大をにらんで、家庭用や車載用ネット機器の開発に着手。モトローラやカシオ計算機など大手企業と提携して製品を出荷済みだ。例えば、同社が開発した音楽再生用ネット機器をパソコンと家庭用ステレオに接続すれば、音楽ネット配信サイトから好みの音楽をダウンロードし、ステレオで本格的なサウンドを再生できる。

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