【ブックハンティング】 夫人が語る意外なプーチン像

執筆者:ダスコ・ドーダー2002年12月号

 さきごろロシアで出版された、ウラジーミル・プーチンの生涯を描く三部作の第二巻『権力への道』は、少年期をたどった第一巻に続いて、一九七五年から九九年までのプーチンの足跡を追っている。この本の特徴は、プーチンの友人や同僚の心温まる思い出話でもなければ、彼の勇気や見識を称えるくだりでもない。そうした部分に関しては、ほとんど「聖人伝」とでも言うべき第一巻と何ら変わりはない。ちなみに完結編となる第三巻は来年十一月に刊行される予定。プーチン大統領再選に向けての選挙運動中に、タイミング良く礼賛本が出ることになっているわけだ。 この本の最大の特徴は、プーチンの四十四歳になる妻、リュドミーラの語るプーチン像である。著者のオリェーク・ブローツキーに対して、彼女は無防備といっていいほど率直に夫のことを語っている。妻が図らずも漏らしたプーチンの姿は、あまり褒められたものではない。仕事中毒の野心家、秘密主義者で人を操る一方、妻の気持ちを汲む努力はしない――。 そもそも彼は交際が始まってからも長い間、KGB職員であることを隠していた。ある日、女友達からこのことを耳にしたリュドミーラは、直接プーチンに尋ねてみた。「ああ、その通りだ」。答はそれだけ。リュドミーラは、プーチン自身がこの女友達に、それとなくKGBに雇われていることを伝えてくれるよう頼んだ「可能性が高い」と考えているが、「現在に至るも、確かなことはわからない」。リュドミーラは、「一緒に暮らしていても常に試されている気がする」と語っている。

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