「ヨーロッパとキリスト教の関係をどう捉えるか」――この古くて新しい問題が策定中の「欧州憲法」草案をめぐる議論で改めて問い直されている。ローマ法王ヨハネ・パウロ二世は機会あるごとに「ヨーロッパが誇る文化と人道主義の形成に決定的な役割を果してきたキリスト教への言及が憲法にあるべきだ」とロビー活動に忙しい。一方、世俗派は政教分離原則を掲げ、“宗教条項”を憲法に入れることに断固反対している。 二〇〇四年に中東欧諸国から最大十カ国の新規加盟が予定されているヨーロッパ連合(EU)は、自らの新しい像を描くための検討を二〇〇二年二月から、ジスカールデスタン元仏大統領を議長とする欧州将来像会議で開始した。会議は二〇〇三年六月までに欧州憲法の草案を作る予定だが、その中にヨーロッパとキリスト教との関係を示す何らかの表現を盛り込むか否かで論争が続いている。 賛成派は憲法前文などで「宗教的な価値や伝統」といった間接的な表現か、あるいは「教会が担ってきた役割」といったより直接的な言葉で、ヨーロッパとキリスト教との関係を明確に示すべきだと主張している。欧州議会の最大会派で支持派の中核、欧州人民党は十一月、独自の草案を提示した。草案は「ヨーロッパが引き継いできた宗教的遺産」「神を信じる者の価値」といった間接的な表現ながらも、キリスト教に言及している。また、ドイツ出身のポッテリング党首は「ヨーロッパを一体化してきたのはキリスト教のヨーロッパというイメージだ」と述べている。東欧にまで広がるEUに一体性を付与できるのはキリスト教の価値や伝統だけという認識が根底にある。

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