自然体の15年間

執筆者:梅田望夫2003年1月号

「僕の話は平凡すぎるんじゃないかなぁ。十六歳のときアメリカに来てから、特に気負うこともなく、ずっと自然体でやってきただけですから」 インタビューを申し込んだ私に、クアルコム(本社・サンディエゴ http://www.qualcomm.com/)のエンジニアリング部門ディレクター・寺澤大輔君(三一)=独身=はこう答えた。さっそく彼の「自然体の十五年間」のストーリーに耳を傾けてみよう。「アメリカに駐在することになった両親と一緒に、ロサンゼルス近郊のパロスバルデスという町にやって来たのは一九八七年でした。当時武蔵高校の二年生だったので、来た当初は一年くらいで日本に帰って受験するのかなと漠然と想像していました。でも、こちらで通うことになった公立高校の友達が皆、大学進学の準備をしていたので、そんなオプションもあるのなら僕もやってみようと、軽い気持ちでアメリカの大学を目指すことにしました」 寺澤君は、高校からの推薦と「共通一次と知能テストの中間くらいの試験」とエッセイで、スタンフォード大学にストレートで合格する。「スタンフォード大学(全寮制)の授業料は日本の大学と比べてものすごく高いです。だからそんな授業料を四年間支払ってくれた両親には、今でも足を向けては寝られません。ただ本当に経済的に苦しい学生のためには、ローンなど充実したファイナンシャル・エイドが制度として用意されていました。経済的理由だけで学生が大学を断念しなければならない状況は避けるという思想がアメリカにはあるからです。僕もスタンフォードの大学院(電気工学科)に進学してからは経済的に自立しました。教授の研究を週に二十時間手伝うと授業料と生活費分の給与が支払われるリサーチ・アシスタントシップ制度があったからです」

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