中国が特許や意匠権など知的財産の権利者を法的に保護するプロパテント政策へ舵を切り始めている。コピー商品の横行に頭を痛めてきた日本企業にとっては福音のようにも感じられるが、大胆な政策転換の裏には、将来を見据えた中国の深謀遠慮が隠されている。日本は「世界の頭脳」を目指し始めた中国に対する知財戦略を再構築する必要がある。「中国の知財戦略を端的に示した」。ある日本の法曹関係者がこう語るのは、北京市第一中級人民法院が昨年秋に下したスクーターのコピー商品を巡る意匠権判決だ。争点はホンダのスクーターと、かつて同社の提携先だった台湾メーカー製のスクーターが似ているかどうか。判決は「一般消費者が意匠上の角度から二者を混同することは十分あり得る」と述べ、ホンダの意匠権を取り消した国家知識産権局(日本の特許庁に相当)の決定を支持したのである。台湾メーカーがホンダより早く意匠権を登録していたことが決め手となった。ホンダはこの判決を不服として上級裁判所に提訴した。 注目すべきはホンダが敗訴した判断基準。日本では、似ているかどうかは目の肥えた消費者もしくは専門家の判断が基準になるのに対し、同判決は「一般消費者が商品全体を見たときの印象」を基準とした。日本の基準なら両社のスクーターは「似ていない」ことになり、ホンダの意匠権が認められただろう。

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