経済回復の鍵を握るアルゼンチン大統領選挙

執筆者:前田浩志2003年2月号

[サンパウロ発]南米アルゼンチンの金融危機が長期化している。支払い停止から一年が経過した民間向けの対外債務は依然、返済再開のめどが付かず、財政再建に不可欠とされる国際通貨基金(IMF)の融資も、本格的な合意成立は五月に発足する次期政権に持ち越される見込み。不況とインフレで全人口の六割が貧困層に転落するという国民の窮状をよそに、与党の正義党内では大統領選挙をにらんだ有力者同士の主導権争いが続き、事態正常化を遅らせている。 政府の経済政策に対する抗議デモが各地で暴動に発展し、デラルア急進党政権が崩壊に追い込まれたのが二〇〇一年十二月。暫定大統領に選出されたサンルイス州のロドリゲス知事は、正義党の内紛のためわずか一週間で辞任し、代わって政権を任されたのが同党実力者のドゥアルデ氏だった。 ドゥアルデ大統領は昨年一月の就任後、外国為替取引を変動相場制に一本化し、通貨ペソは一時、対ドルで四分の一近くにまで下落。ドル建て債務負担の急増で、企業倒産や外資撤退が相次ぎ、五月の失業率は過去最悪の二一・五%を記録した。また、輸入品などの物価急騰で同年のインフレ率は四一%に達し、「不況下の物価高騰」という異常事態に政権支持率は一〇%以下に落ち込んだ。

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