次々とぶち上げられた奇策の本質は年越しの金策――見かけ倒しの自己資本比率対策と言うほかない。中身は何も変わらないメガバンクに、「問題融資・生保危機・株安」のトリプル・ショックが襲いかかる。 竹中平蔵金融担当相とのにらみ合いのなかで、大手銀行は年を越した。銀行は昨年末に様々な経営組織変更の奇策を繰り出したが、目的はただ一つ。国有化と経営責任追及の回避である。金融再生の掛け声とは裏腹に、金融システム衰弱に向けたゲームが続く。「財務戦略にはプライドが入りようがない」。昨年十二月二十五日、金融界が仰天した経営組織再編を発表した三井住友銀行の西川善文頭取は、朝日新聞のインタビューに対しこう言ってのけた。仰天をさそった組織再編とは、いうまでもなく子会社のわかしお銀行が三井住友を飲み込む合併をさす。 存続会社を資本金の小さいわかしおとすることで、浮いた資本は帳簿上は合併差益として計上される。その合併差益を使って、保有株式の減損処理に充てようという寸法だ。三井住友は株式の減損処理が遅れており、昨年九月末の株式含み損は九千三百億円にのぼっていた。平均株価が八千円台に下落した昨年末の段階では含み損は優に一兆円を超えていたもよう。

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