揺らぐEUの財政規律

執筆者:2003年2月号

ユーロ圏の景気低迷で、EUの財政規律を定めた「安定・成長協定」が空文と化す可能性が出てきた。加盟各国の景気対策への欲求が募る中、欧州委員会はアメとムチの対応で協定の枠組み維持を図ろうとしているが……。[ブリュッセル発]ユーロ導入という歴史的実験を成功させたかに見えた欧州が、思わぬ壁に直面している。ユーロの価値安定のため参加国の間で取り交わされた財政規律が景気回復を阻む足かせとして作用し、ユーロ参加国を身動きの取れないジレンマに陥れているからだ。 欧州連合(EU)の旧共産圏諸国などへの拡大を決めた昨年十二月のコペンハーゲン首脳会議。加盟国拡大問題に専念するため、一般の経済問題は議題からはずされた。EUにとっては拡大交渉が失敗に終わった場合の政治的コストははかりしれないだけに、当然といえば当然かもしれない。しかし、日米欧がそろって景気停滞に苦しむ中で、欧州十五カ国の首脳が一堂に会しながら経済対策で意見交換しなくてすむほど、各国の置かれた状況は簡単ではない。「第二の日本」への懸念が消えないドイツをはじめ、ユーロ圏各国は内需の低迷に直面し、十二カ国全体の二〇〇二年の経済成長率は〇・八%程度だったと推定されている。二〇〇三年は一・八%に回復というのがEU当局の見解だが、米景気とイラク情勢次第の面が大きく、先行きはきわめて不透明。景気の二番底を避けるためにはマクロ政策の発動が望まれる状況だ。

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