改革者たちからのメッセージ

執筆者:船木春仁2003年2月号

 アメリカの神学者、ラインホルト・ニーバーが第二次世界大戦中に、田舎町の教会の礼拝で語ったと伝えられる「セレニティーの祈り」には、次のような一節がある。――神よ、変えることができないものを受け入れる平静さを、変えるべきものを変える勇気を、そしてそれらを識別する知恵を与えたまえ。 セレニティーの祈りについては、ニーバーがどのような願いを込めて行なったものなのかはっきりとしていない。ナチスドイツの非人間的妄動に対する戦いを説いたという人もいれば、単に戦場の兵士への加護を願ったものだとする人もいる。祈りが行なわれた時代と当時の世界状況を考えれば、こうした推測がなされるのも無理はない。 ただ、私は今、この祈りをまったく異なる意味で読んでいる。構造改革時代における改革者たちへの大いなる励ましと感じるのである。強さが弱さになる時代 二〇〇〇年三月からスタートしたインタビュー連載企画「時代に先駆けた者たち」は、今号をもって終了する。この間、連載に登場していただいた人たちは三十一人に上る。今や誰もが当たり前だと信じて疑わないさまざまな制度やビジネスルールを作り、定着させてきた人々だ。 たとえば、もはや一般名詞となっている「介護」という言葉を発案した磯部成文氏(フットマーク社長=肩書きは連載掲載時、以下同)は、なぜ「介護」という言葉に辿り着いたのか。一九七〇年代から連結決算制度導入の必要性を説きながら制度の整備に努力してきた金児昭氏(信越化学工業顧問)は、連結決算制度を通してどのような企業統治のあり方を模索していたのか。大蔵省(当時)の護送船団方式による行政支配が続く中で外資系生保を次々と立ち上げてきた千葉信氏(ING生命社長)は、日本的な金融風土の問題をどこに感じていたのか等々。

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