大手生保にも忍び寄る「債務超過」の危機

執筆者:田村洋佑2003年3月号

国際会計基準理事会の新方針として、保険会社の財務にも時価会計を徹底することが決められた。導入すれば、多くの生保が債務超過転落を避けられない.日本勢の抱えた時限爆弾が動き出す――。[ロンドン発]一月二十三日、英ロンドン。会計基準の世界的な統合を目指す国際会計基準理事会(IASB)は賛成十二、反対二の圧倒的多数で「保険時価会計」の導入方針を決めた。「ついにこの日が来てしまいましたね」。本社に議事内容を伝えるため傍聴していた日本の大手生命保険会社のロンドン駐在員は、深いため息をついた。IASBのデービッド・トウィーディー議長は「方針に肉付けをするこれからが大変」と厳しい表情で語り、事務方に今後の指示をしながら議場を後にした。米欧の会計ジャーナリストがコメントをとろうと、IASBの理事たちに群がっている……。 この、普段は冷静な国際会計の関係者を騒然とさせた「保険時価会計」とは何か?膨れ上がる「責任準備金」 大まかに言うと保険の時価会計は二つの会計処理を指す。一つは株式や債券など保険会社の資産サイドを毎期時価で評価し、その損失や利益を業績に反映させるもの。もう一つは負債サイドの責任準備金を時価主義に則って会計処理しようという試みだ。

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