「イラク情勢」予測されうるシナリオ

執筆者:伊奈久喜2003年3月号

アメリカが国連にイラクの「欺瞞」の証拠を提示、イラクはますます追い詰められた。パウエル国務長官が自ら安保理への説明に臨んだことに、今後の展開を予測する上で重要な意味がある。 将軍たちは前の戦争を戦う。だれしも経験から完全には自由になれない。これから起こるかもしれぬ戦争の正確な見通しを語るのは難しい。エコノミストや軍事評論家が悲観論を語りたがるのは、楽観論がはずれたら責任を問われるが、悲観論がはずれても、予測が警告として機能した結果だと説明できるからだろう。イラク情勢の予測にも、この傾向がある。確かに戦後の一定期間の混乱まで考えれば、一方の完璧な勝利と判断できる戦争は少ない。だからといって勝利者にとって勝利が有害無益だったわけでもない。 イラクで始まるかもしれぬ戦いは、開戦前から名前の決まった戦争となる。第二次湾岸戦争である。一九九一年四月三日に採択された国連決議六八七は、湾岸戦争の停戦決議であり、大量破壊兵器の廃棄、査察、国際テロ組織支援の禁止などを内容とする。イラクは十二年間にわたってこれを欺き続けた。戦争になれば、根本原因はイラクの湾岸戦争停戦決議違反にさかのぼるから、目の前の戦争は第二次湾岸戦争となる。

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