緊迫するイラク情勢をめぐり、フセイン大統領と側近が海外へ亡命する事態に備え、ロシアが一行約二百人を乗せることのできる航空機を密かに準備した。 フセイン亡命による開戦回避は、米ブッシュ政権にとって最善のシナリオ。石油施設の破壊や米軍兵士の犠牲を回避して親米政権を樹立する唯一の方法だからだ。 ロシアも、フセイン亡命工作が成功すれば米国にイラク石油利権の提供を迫ることができる。フセイン大統領の保護は「独裁者の保護」という批判を招く一方で、「戦争回避への貢献」を宣伝できるとの読みもある。 諜報筋によると、ロシアの諜報機関は、今年に入り、各方面からフセイン大統領周辺へのアプローチを強化。湾岸戦争で調停に動いた中東専門家プリマコフ元首相らのチャンネルも利用して戦争回避への道を模索しているという。 仏独を中心に武力行使への慎重論が高まる中、亡命工作は難航しているが、急転直下の展開に備えてフセイン一行の運搬手段だけは確保。場合によっては、この航空機でロシア以外の第三国に脱出させる選択肢も検討している。

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