「悠々自適よ、さらば」と、新たな仕事に情熱を燃やすシニアが増えてきた。彼らの知識と経験、そして挑戦は、高齢化に進む日本社会の転機かもしれない。気鋭のノンフィクション・ライターが、新しい高齢者群像に迫る。 国全体が高齢社会へと向かいつつあるなか、どうしたら社会の活力を維持していくことができるか――。 これが、目下日本社会に突きつけられている喫緊の課題である。 日本の総人口に占める六十五歳以上の高齢人口の割合は一八・〇%(二〇〇一年十月現在)。二〇〇七年頃には団塊の世代が定年を迎え始めると同時に日本の総人口そのものが減少に転じ、高齢人口の割合は二〇一五年には二六・〇%に上昇すると推計されている。このままいけば二〇五〇年ごろには全人口は一億人程度にまで落ち込み、このうち高齢人口比率は三五・七%を占めるとみられる。いきおい、これからの日本社会の活力を保持していくうえで、いわゆるシニア世代が社会とどう関わっていくかが大きなテーマとなってきている。 こうしたなか、いまやシニア世代には、一定の年齢を過ぎても社会の一線から退くことを選択しない人たちが少なからず見られるようになってきた。高齢者と呼ばれる年齢になったからといって、悠々自適の生活をよしとせず、その時点で持てる能力の範囲内で社会に関与して、自らの知恵や経験をもとに仕事をしていこうとする。新しいタイプのシニア世代が登場しているのである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。