大手銀行が死に物狂いで巨額の資本増強に乗り出した。過剰債務企業向けの不良債権や保有株式の値下がりで、自己資本不足の懸念がいよいよ現実味を増してきたためだ。「天敵」とも言うべき竹中平蔵金融相が、自己資本比率が最低基準を下回る銀行は国有化する姿勢を鮮明にしているだけに、増資の成否が大手銀行の命運を決めるといっても過言ではない。ただ、この大手銀行による一連の増資もまた、生き残りをかけた「奇策」の域を出ない。「本当に実現できるのか」 みずほフィナンシャルグループが赤字決算と増資を一月二十一日に発表して以来、みずほグループ各社、銀行アナリストに問い合わせが殺到している。みずほが実施する一兆円にのぼる空前の増資が、明らかに疑問視されているのである。 みずほは金融庁検査を契機に、不良債権の査定厳格化と引当率アップで二兆円の処理を強いられ、株式含み損の処理を含めると二〇〇三年三月期に一兆九千五百億円もの当期赤字に転落する見通し。「自己資本比率八%以上を確保するには、どうしても一兆円の増資が必要」(みずほホールディングス幹部)だが、これほど低迷した市場環境で一兆円となれば、周囲が危ぶむのも無理はない。ところが、みずほ首脳は自信満々だという。

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