香港と広東省の珠海、マカオを結ぶ海上大橋構想をめぐり、日本企業も巻き込んで香港政財界の議論が白熱している。珠江デルタとの連携に将来を託す香港政府が、民間資金での建設を目指す香港の中堅財閥、ホープウェル会長の胡応湘氏のアイデアに乗り、計画は実現に向けて動き出した。しかし地域の経済地図を塗り替えかねないインフラだけに、港湾に巨大な権益をもつ李嘉誠氏や広州市などの地域開発に投資する霍英東氏ら有力財界人が反対を表明。百五十億香港ドル(約二千三百八十億円)に上る建設費の負担も決して軽くはない。 世界の製造業の輸出工場が集積する珠江デルタを香港と結び、物流ハブとしての香港の機能を高めようというのが構想の狙いだが、結ぶ先が珠江デルタ西部であることが利害対立の種となった。李嘉誠氏グループは塩田港などデルタ東部の港湾に大きな権益をもち、物流が変わる影響は大きい。李氏は香港の港にも大きな権益があり、最終的に香港でメリットを得られれば問題なさそうに見える。しかし大橋推進派は、政府の支援で新たなコンテナターミナルを大橋の香港側付近に建設する構想を持っており、これが李氏の利害と衝突する。南沙などデルタ東部に投資してきた霍英東氏も、開発が遅れた西部に今後あえて巨額な投資を進めることに疑問を唱えている。

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