人づくりの「トヨタウェイ」

執筆者:船木春仁2003年4月号

ものづくりは人づくり。最強の製造業といわれるトヨタ自動車のテーゼである。「失われた十年」の間にトヨタは二十一世紀をにらんだ“人づくり”に乗り出した。静かに進む改革を精査しつつ、日本企業に欠けた新たな産業人育成の姿を探る。 トヨタ自動車の快走が続いている。二〇〇三年三月期連結決算では、経常利益は三期連続で過去最高を更新し、日本企業初の一兆五〇〇〇億円に達する公算が大きい。直近の新車販売でも、二月に「カローラ」がホンダの「フィット」を四カ月ぶりに抜いて首位を奪還。さらに上位一〇車種中トヨタ車が六つを占めるなど、「強固な国内販売網により不況期にシェアを上昇させる」というトヨタの定評を証明して見せた。 同時に、時代の閉塞感を打ち破る“希望の星”としてトヨタを見る目も熱くなっている。「改善」や「カンバン方式」などトヨタ独自のものづくりの哲学こそ、日本の針路を示しているというのである。NECは、グループの全工場にトヨタ生産方式を導入して再生を図っているし、今春に発足する日本郵政公社でも業務改革の核としてトヨタ生産方式を試行中だ。まるで日本中が今、藁をもつかむ思いでトヨタ礼賛を繰り返しているように見える。

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