中国携帯電話市場で息を吹き返すPHS

執筆者:五味康平2003年4月号

 日本では移動体電話としての使命は終えつつあるPHSが中国でブームを迎えそうな状況だ。月額基本料金、通話料とも携帯電話の三分の一程度というコストの安さが、携帯電話に手が届かない層に歓迎されている。公衆電話も少なく、一般家庭への固定回線の電話普及も中進国レベルである中国では、PHSが携帯電話とは異なる市場を築く可能性も出てきている。 PHSが中国に向いている最大の理由は都市部の人口の密集度。中国の都市では圧倒的に集合住宅が多く、オフィス街も大型ビルが林立するケースが多いため、一基地局のカバーエリアが小さく、ビルの中に館内アンテナなども設置できるPHSに向いている。日本ではPHS普及に向くとされる人口百万人以上の都市は十三都市しかないが、「中国には少なくとも三百以上」存在するといわれ、潜在的な需要は大きい。 日本では移動体電話は走行中の車の中や新幹線で使うケースが多く、高速移動に弱いPHSは人気が得られなかったものの、中国では固定電話に近い定置型の利用が中心という事情もある。中国のPHSは中国電信の地域子会社が浙江省で始めた「小霊通」が先駆けだが、全国ローミングはない。地元を離れれば使えないわけだが、PHSを求める層は頻繁に出張や旅行をすることはなく、日本では問題となるローミングもほとんどネックになっていない。PHSブームに目をつけた中国電信は北京、上海などへの進出を計画しているほか、中国網絡なども新規参入を狙っており、三年で全国の主要都市に広がるとの予測も出ている。

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