新幹線が、もし韓国にあったら

執筆者:徳岡孝夫2003年4月号

 横浜の南郊、我が家に近いJRの駅は、根岸線の終点である大船駅から二つ目である。六分か七分で着く。それなのに乗ると、早くもぐっすり眠っている女の子がいる。しかも朝である。電車通学の女子高校生らしいが、オカッパの髪を顔の両側にスダレのように垂らし、熟睡している。夜ごと入眠に苦労する私は、揺り起して眠るコツを聞きたい誘惑に駆られる。 山陽新幹線「ひかり」の運転士(三三)が居眠りしたのは午後三時三分に福山駅を出た数分後からで、三時二十一分に岡山駅に着くまで眠り、運転室に入ってきた車掌に起されてやっと目が覚めた。新幹線が脱線転覆すれば、阿鼻叫喚の地獄になったところだった。 運転士は「睡眠時無呼吸症候群」だった。寝床では眠りが浅いかわり、日中も眠気が続く病気である。JRによる乗務員の健康管理が問題になってくる。 しかし、一般に運転という作業は、ルーチンである。それは日常業務であり、比較的少量単純な動作を間違いなくこなしていれば、無事が保たれる。逆に言うと、無事を保つにはごく少量の、平易な動作を間違いなく果たしていればいい。だから運転という仕事は、登校中の女子高生と同じほど眠くなる。車でも電車でも飛行機でも大差ない。

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