日本に舞うのは「ひ弱なハゲタカ」?

執筆者:川原吉史2003年5月号

外資系ファンドはみんな悪くて脅威なのか。「十把ひとからげ」の議論では見えない企業再生市場のお寒い実情――。 米系の買収ファンド、ローンスターが日本のM&A(合併・買収)市場を席巻している。「日本での投資規模は他の外資系ファンドを上回る最大規模」(市場関係者)。日本参入は一九九七年、当初は銀行の不良債権への投資が中心だったが、翌年から金融機関や事業会社の不稼働になった不動産への投資に進出した。 その後は企業買収に本格的に乗り出し、九九年九月のミネベア信販(現スターファイナンス)の買収を皮切りに、野村ファイナンス(現あたごファイナンス)、東京相和銀行(現東京スター銀行)、東京シティファイナンス、ファーストクレジット、地産、目黒雅叙園と、一気にビジネスを拡大してきた。 日本では簿価ベースで五兆円の企業と債権を取得済み。昨年春には日本を主要な投資先とする新しいファンド、「ローンスターファンド4」を立ち上げた。資産規模は四十二億ドル(約五千億円)。借り入れを活用すれば一兆五千億円の投資が可能だ。このうち一兆円を三年以内に日本で投資する計画で、昨年一年間ですでに約五千億円を投資している。 同じく米系の買収ファンド、リップルウッド・ホールディングスが、日本長期信用銀行(現新生銀行)の買収を巡って「ハゲタカ・ファンド」と罵られた経緯があるせいか、ローンスターの日本社会への気遣いは人一倍。日本法人ローンスタージャパンの初代会長は、元野村証券副社長で、経済企画庁長官も務めた寺澤芳男氏。二代目も大蔵省国際金融局次長、関税局長、国土庁次官を歴任した久保田勇夫氏だ。いずれも政官財界に太いパイプを持つエリートである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。