新型の肺炎SARS(重症急性呼吸器症候群)の感染者が百人を超えたシンガポールで、企業が感染症対策に追われている。 感染の拡大が深刻になった三月下旬、日系百貨店の地下食品売り場で感染者が出たとの噂がEメールで飛び交い、客が激減。政府系大手銀行DBSについても行員が感染したという情報が流れ、同行は「ライバル行が流した悪質な噂」との声明を発表、打ち消しに躍起となった。米系半導体大手のモトローラの工場では実際に一人が感染し、工場が一時休業に追い込まれるなど混乱が広がった。 四月に入り、企業はさまざまな自衛策を講じ始めている。DBSは支払いやクレジットカードの承認など業務の停滞が許されない部門の担当者を複数のグループに分け、違う場所に分散して配置。電力会社も基幹業務の担当者を二チームに分け、それぞれが接触しないようにしている。来客をオフィス内に入れず、外で応対するマニュアルを作った企業もある。 人と人とが接触する外出や会合を減らすため、テレビ会議の利用も増えており、通信会社によると通常より五〇%増という。インターネットの通信量も二〇%増となっている。

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