いま、知っておくべき「金正日の辞書」

執筆者:武貞秀士2003年5月号

「イラク後」の焦点は北朝鮮の核開発だ。だが、北朝鮮独特の「言語」を知らないで対応策を練れば、事態はむしろこじれることになる。 イラク戦争で国際社会は、米英が大量破壊兵器の開発、拡散に断固とした姿勢で対応することを知った。石油権益や「ネオコン」という言葉だけで米英の行動を説明するのであれば、石油やイスラエルとつながりのない北朝鮮は「悪の枢軸」の一角を占めることはない。米国の断固とした決意が北朝鮮に対して向けられるとき、金正日国防委員長率いる北朝鮮が、はたして大量破壊兵器開発疑惑の解消に協力するか否かが焦点となってきた。 しかし、四月六日、北朝鮮外務省は、「国連安保理が米国の封じ込め政策に利用されるなら、潜在力を総動員し、戦争の抑止力を持たざるを得ない」と声明を出し、強硬姿勢を示した。その後、多国間協議受け入れを示唆したが、米国との二国間協議への「入り口」にする腹づもりだろう。仮に今後、多国間協議が始まったとしても、金正日の真意を見極める必要がある。その際、注意すべきは、北朝鮮の使う言葉はわれわれの常識的解釈とはかけ離れた意味を持つことが少なくないということだ。その特殊な意味を理解していなければ、北との交渉で思わぬ失敗をしかねず、正しい対北朝鮮政策も立てられない。「金正日の辞書」に通暁しておく必要があるのだ。彼我の解釈のズレを重要なキーワードに沿って解説していく。

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