テレビ報道に八つ当たり

執筆者:成毛眞2003年5月号

 イラク戦争が始まって二日ほどテレビにかじりついていた。ブッシュと彼を支持しているアメリカ国民の愚かさにあきれ、アメリカを支持するという選択肢しかない日本の悲哀をかみ締めながらのまさに観戦である。 戦争初日は圧倒的に内容は民放のほうが濃かった。なにしろ戦闘開始まえから特番が始まっていたのだ。すでに編集済のイラク戦争までの経緯VTRなどが用意され、コメンテーターも待機していた。番組の担当者は心の奥底で、どうせおっぱじめるなら特番中に始めて欲しいと思っていたのではないか。 いっぽうのNHKは予定の番組を中断して臨時ニュースとしての扱いである。アナウンサーが次々と入る外電を読み上げ「少々お待ちください、新しい情報が入りました」などと切迫感を演出していた。局のお偉いさんから「待ってましたといわんばかりの報道はやっぱまずいよ」というお達しでもあったのだろうか。 いやはやどっちもどっちだ。とはいえ、戦争報道について日本のテレビ局を批判するつもりはない。アメリカのテレビのあざとさと比べれば、むしろ今回はまっとうに報道しているように思われるからだ。 CNNもすごかった。地上軍がバグダッドに進む場面では、キャスターが戦場からのライブ映像に酔いしれて自画自賛の嵐。「すばらしい映像です」を連呼していた。レポーターは戦車隊を「鋼鉄の波」と叫び、解説者はフセインの悪者ぶりをナレーターのように解説する。番組担当者がスター・ウォーズのテーマ曲を流さなかったのが不思議なくらいだ。

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