新政権で力を得た香港財界人はこの人――

執筆者:樋泉克夫2003年5月号

 三月に胡・温コンビの新政権を選出した全国人民代表大会、これと並行して開かれた中国人民政治協商会議全国委員会の双方には、香港出身者も参加している。彼らの任期は、全人代、全国政協ともに二〇〇八年までの五年間だ。 全人代に議席をもつ香港出身者は三十六人。中央政府出先機関の関係者、香港立法会議員などとともに八人の企業家が議席を持っている。金利来集団を経営し「ネクタイ王」と呼ばれる曾憲梓は常務委員を務め、代表は一九八八年から四期連続。タイのバンコク銀行を経営する陳一族の家長で香港亜洲金融集団を率いる陳有慶も続けて四期目だ。上海で不動産開発を積極的に進める瑞安集団の王英偉と香港フェリーを経営していた王敏剛は、若手の注目株だろう。 一方、全国政協をみると、香港出身者の代表格は前期に続いて副主席を務める霍英東だ。親北京派の最有力者として知られ、広東での先端技術工業団地建設に強い意欲を示す。常務委員に選ばれたのは、大手不動産デベロッパーの新鴻基地産を率いる郭炳湘、香港最大の総合企業集団である会徳豊・九龍倉集団総裁の呉光正、現在の香港政府で住宅・土地政策にもっとも影響力を持つ梁振英、それに李嘉誠の長男で彼の後継者とみられている李沢鉅。一般メンバーには大手不動産デベロッパーの新世界発展集団を率いる鄭裕トンの長男の鄭家純、香港・マカオと珠江デルタを結ぶ全長三十キロの港珠大橋建設を推進する胡応湘合和実業主席などがいる。タイのPグループを率いる謝国民の実兄でグループの香港責任者の謝中民も選ばれているが、これは北京のCP重視の傍証であり、ASEAN(東南アジア諸国連合)にひろがる華人企業家に向けた“統一戦線工作”の一環ともいえそうだ。

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