ダイエー幻の「大救済作戦」

執筆者:2003年5月号

「二月期決算、公約達成は不可能」――。マルエツから吉野氏を顧問に迎える舞台裏では、なりふりかまわぬ生き残り策が講じられていた。 足腰が弱まり、ボケの症状がでてきた親の面倒を見るのは子の役目。ヒトの世界なら当たり前の孝行だが、これを企業の世界に当てはめるとどうなるか。経営再建中のダイエーは自らの不甲斐なさを関連会社で食品スーパーを運営するマルエツに尻ぬぐいさせようと画策していたのだ。「三井住友銀行と、わかしお銀行の合併のようなことが可能だろうか」。昨年十二月上旬、ダイエーの高木邦夫社長と蓮見敏男取締役(新三カ年計画推進統括)との間で急浮上した構想がある。マルエツとの合併だ。驚くべきは売上高が約三千二百六十億円(単体、二〇〇三年二月期推計)しかない中堅のマルエツを存続会社とし、一兆五千九百億円(同)にもなるダイエーが被合併会社となるというものだった。 小が大を飲み込む手法を用いると、帳簿上、被合併会社(ダイエー)の自己資本の一部を合併差益として計上することが可能となる。ダイエーが手本としたのは、三井住友銀行とわかしお銀行の合併だ。わかしおを存続会社にすると差益が約二兆円にもなり、不良債権処理の原資にできる。歴史ある三井、住友両財閥の流れを汲む銀行を消滅させることには反発も出たが、西川善文・三井住友フィナンシャルグループ社長は「財務戦略にプライドは入りようがない」と語り、合併へと駒を進めた。

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