「新石油秩序」に臨むメジャーの野望

執筆者:八巻莞治2003年6月号

巨大なイラク油田の影響力に怯え、周辺産油国が浮き足立ち始めた。メジャーにとっては権益拡大に絶好のチャンス――だが、一寸先は闇。市場の需給バランスが崩れれば、メジャーもその衝撃波に翻弄されかねない。[ドバイ発]イランの首都テヘランで四月中旬に開かれた「テヘラン・オイルショー」。世界各地から駆けつけた石油関係者で大盛況の会場にはザンガネ・イラン石油相が姿を見せ、「イランはイラクの積極的な増産を座視しない。我々も新規油田の開発を加速する」と力説した。イラン国営石油会社(NIOC)の首脳陣はメジャー(国際石油資本)幹部らと接触し、「今後数カ月以内に魅力的な新鉱区の入札を発表できる。期待して欲しい」と、愛想を振りまいた。 日本の大手商社の中東駐在幹部は「フセイン政権の崩壊でイランが焦り始めた。宿敵イラクがメジャーの支援を受ければ、原油生産量で抜かれ、石油輸出国機構(OPEC)での力も低下しかねない」と指摘する。 イランは一九九〇年代半ばから油田開発で外資参入の機会を段階的に広げてきた。イラク国境に近い世界屈指の「アザデガン油田」プロジェクトは日本の石油開発会社が中核となる。交渉は難航してきたが、早ければ今年夏までにも最終合意が実現する。これまでイランは外資が生産した原油をイランに売り渡す「バイバック(買い取り)契約」や、資源探査と油田開発が別契約であるなど、メジャーにとって魅力が乏しかった。しかしイラン政府は今後、探査と開発をリンクさせる新契約を採用する方針を打ち出すなど、メジャーの投資意欲を高めるために躍起になっている。

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