ブラジル初の「労働者階級出身の国家元首」を自任するルラ大統領が、意外にも企業家の間で人気を博している。 地元経済紙が最近、ブラジル企業百四十四社の幹部を対象に実施した聞き取り調査によると、大統領の支持率は実に七二%。単純な比較はできないものの、別の世論調査による国民一般からの支持率五一%を大きく上回った。 ルラ氏は今年一月の就任後、大胆な歳出カットで財政再建を図るとともに、高金利政策でインフレを抑制。中央銀行総裁に野党出身の銀行家を据える「禁じ手」まで繰り出し、自身に対する経済界の懸念払拭に努めた。この結果、左翼政権誕生を警戒し昨年だけでドルに対して三五%も下落した通貨レアルは、今年に入って約一五%戻している。 ルラ大統領はさらに、流通課税の強化と、公務員への年金支給額の大幅減額を柱とする税制・年金制度改革案を議会に提出。国際金融界は歓迎している。かつて労働運動を率い投獄された経験もある「闘士」の豹変には、出身母体の労働党左派からは「中道の前政権より保守的だ」と批判も噴出しているのだが……。

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