ORHA 米復興人道支援室

執筆者:2003年6月号

「アメリカのための組織」と批判されるORHAが、大改組の気配を見せている。一向に改善しない生活環境にイラク国民の不満が募る中、新政権づくりに向け横車を押しつつ進むこの組織は、ブッシュ政権内部の焦りを映す鏡なのか。「自由なイラクへの第一歩を刻むのに、文明が誕生したこの土地以上の場所があるだろうか」。四月十五日、イラク南部ナシリヤ近くにある古代都市ウル。紀元前三千年に都市文明が発祥した土地で開かれたイラク内外代表による暫定統治機構(IIA)の樹立に向けた一回目の準備会合で、米復興人道支援室(ORHA)を率いるジェイ・ガーナー室長はマイクを握り、こう強調した。 演説に力が入るのも無理はない。ブッシュ米大統領が中東民主化のモデルと位置付けるイラク復興プロセスは、中東地域の地政学をも変えかねない。ガーナー氏は湾岸戦争後にクルド人自治区で従事した人道支援の手腕が評価され、退役軍人の生活から一転、ORHAの指揮を執ることになった。 フセイン政権崩壊後、力で治安を守るのが戦争の英雄トミー・フランクス米中央軍司令官ならば、ガーナー氏はさしずめ「自由の英雄」と呼べるかもしれない。今年一月二十日発令の米大統領国家安全保障指令に基づき設置されたORHAは、独裁者からの解放後、国防総省の指示を受けながら国土の復興を進めるのが役割だ。食糧供給や水道・電気など生活インフラの復旧を行ないつつ、イラク人による民主政権樹立をサポートする。

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