「北」につながる日本の闇

執筆者:2003年7月号

 元麻布にあった自民党の政治家金丸信の豪邸の金庫から大量の金の延べ棒が発見されたのは、巨額脱税事件の家宅捜索のときだった。あの金の延べ棒は、いまどこにあるのだろうか。世にも不思議な「無刻印」の延べ棒だった。金丸は周りに「金日成からもらった」と語っていたという話もある。 玄関横にもらい物専用の部屋があるほど贈答品の多い金丸家でも、延べ棒はめったにない贈り物だったのだろう。刻印のない延べ棒は、九〇年九月の金丸訪朝から始まった日朝関係の背後に、どろどろした闇の世界が存在することを暗示していた。 平壌郊外のリゾート地妙香山にある金日成の別荘。五万人のマスゲームに感激しているときに「これから列車に乗っていただきます」と言われ、つれてこられたのが妙香山だった。日本側の随員は平壌に帰され、金丸一人が別荘に残った。北朝鮮側の通訳が一人つくだけの「金丸・金」会談で何が話し合われたのか。記録はすべて北朝鮮にあり、金丸亡き後、日本側にはその内容を知る術がない。 金丸信のあと、小沢一郎、土井たか子、のちに渡辺美智雄と大物政治家の訪朝が相次いだが、核開発疑惑で日朝交渉は頓挫してしまう。金丸の後、北朝鮮と日本をつなぐ実力政治家となったのは、加藤紘一だった。のちに加藤の政治生命を奪うことになる大物秘書佐藤三郎が窓口となり、北朝鮮人脈は広く、深くなっていく。

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