暗雲たれこめるカンボジア総選挙

執筆者:ケイ・ジョンソン2003年7月号

[プノンペン発]たとえカンボジア総選挙の日程を知らなくとも、暗殺や野党支持者の逮捕、デモ隊と警察の衝突などで騒然とする街を見れば、選挙が間近に迫っていることがわかる。 五月下旬、人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、野党サム・レンシー党の党員がパンフレットを配布していただけで逮捕されたことを例にとりながら、フン・セン首相率いる現政権が野党側の活動家を狙い打ちにして逮捕していると非難した。「政府は野党の発言を封じようとしており、公正で自由な選挙をするつもりがあるとは考えにくい」と同団体の研究者サラ・コルムは言う。 最近だけでも十人以上の政治家や活動家が暗殺され、反政府集会は政府の介入で解散させられた。このままでは七月二十七日の総選挙のあと、この国は再び暴力と混【外3572】≦沌≧の波に呑み込まれるとの懸念が高まりつつある。「国民は、みな怯えています」と語るのは、ムー・ソクフア女性問題担当相だ。 米国務省も、少なからぬ暗殺が政治的背景からくるものであると非難する。しかも、「多くが、プロの殺し屋を使って組織的に行なわれた犯行だ」という。 カンボジアで頻繁に使われる政治目的の暗殺の手口には、「フライング・バイク」という俗称がついている。二月下旬、連立与党の民族統一戦線(フンシンペック党)顧問だったオム・ラサディの命を奪ったのもこれだった。犯人はバイクに二人乗りで現れる。後部座席の男が飛び降りて標的を撃ち、再び座席に飛び乗ると、バイクは走り去っていくのだ。

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