周正毅スキャンダルの余震は続く

執筆者:吉野祐2003年7月号

「上海一の富豪」と呼ばれる周正毅・農凱グループ総裁が中国銀行から不正融資を受けていたとされる事件が、経済界のあちこちに飛び火、今年いっぱい火は消えそうにない。 周氏は一九六一年生まれ。小学校卒ながら、上海で月給三十元の工場経理担当者を振り出しに、ワンタン店やレストラン「阿毛トン品」を開業、後に香港での不動産投資で大成功し、いまや資産二十五億元という立志伝中の人物で、二〇〇二年には米『フォーブス』誌の中国富豪番付で十一位にランクされた。八〇年代後半に日本に滞在、育毛剤「一〇一」の販売を手がけたこともある。 不動産を買い付け、ビルを建てて、知り合いの不動産鑑定会社に高めに評価してもらう。それを担保に資金を借り入れ、また雪だるま式に他の不動産を買い付ける――。周氏はそんなビジネス手法で財を築き上げたという。最近では中国国内で電解銅が不足しているのに目を付け、ロンドン先物取引市場から電解銅を買い付けて上海先物取引市場で売却。この銅取引による利益が、自身の収益の六割以上を占めるなど、中国国外でも荒稼ぎをしていた。 現在、中国司法当局は、周氏が中国銀行(香港)の劉金宝・前総裁を通じて二十億元を違法に借り入れた点を問題視、二人を拘束して捜査中だ。五月二十八日に香港メディアが事件を報道した後、上海証券取引所に上場していた周氏傘下の大盈股フェン、海鳥発展が六月四日に取引停止となり、ほかの上場企業の株価も大幅に下落した。また上海市が抱える大型プロジェクト四十二件中、周氏がかかわっていた案件が七件あり、上海の十行近い銀行も多額の融資を行なっているため、金融界にも衝撃が走っている。

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