「海洋経済」という成長のバロメーター

執筆者:五味康平2003年7月号

 中国の経済分野での「海洋国家化」が急速に進んでいる。造船業は建造量で日本、韓国に次ぐ世界第三位の地位を八年続けているが、昨年の建造量は過去最高の四百五十三万トンに達し、日韓との距離を急速に縮めている。船舶の輸出額は十九億二千五百万ドルで、外資系ではなく中国企業主体の分野としては、いまや主力の輸出産業にのし上がった。 すでに大連造船新廠がイランから二十万トン超の大型タンカーの受注実績を積んでいるほか、上海外高橋にある中国最大の造船基地では、世界最大級の十七万五千トン級ばら積み船などを建造している。広東省で液化天然ガス(LNG)の輸入を二〇〇五年に開始するにあたっては、中国国内でLNGタンカーの建造に取り組む構想もある。 中国は一九四九年の建国以来、外洋に進出するよりも国内を固める国家戦略を採ってきた。旧ソ連、インド、ベトナムなど国境を接する国との紛争が絶えなかったからだが、周辺国との国境画定が進み、内陸の安全保障上の不安が薄れるにつれ、外交、経済を両輪とする海洋国家化戦略を前面に打ち出している。輸出製品を運ぶ海運では中国遠洋運輸集団(COSCO)が世界でもトップクラスの海運会社にのし上がるとともに、造船、油田用海上プラットフォームの建造で世界市場で存在感を増している。変わり種では、水産品の輸出が昨年、四十七億ドルに達し、タイを抜いて世界のトップになっている。

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