CDC 米疾病対策センター

執筆者:2003年7月号

SARS対策の初動に機敏な対応を見せた世界最大の感染症対策機関・CDC。国際的な連携も進めるその態勢づくりには、9.11の教訓も生かされた。だが再び予想される「Xデー」に備え、真価を問われるのはこれからだ。 二月二十一日、例年以上に厳しい寒さが続いたワシントンの米厚生省の本館。六階のトンプソン長官室に、幹部の一人が中国・広東省で起きている「異変」について報告のために飛び込んできた。「アトランタの専門家は事態をかなり深刻に受け止めています」。米政府が新型肺炎SARS(重症急性呼吸器症候群)の対応に動き始めたのは、この時からだった。「アトランタ」とは、米厚生省の傘下にある世界最大の感染症対策機関、米疾病対策センター(CDC)を指す。米国だけでなく世界のSARS対策は、いまやCDCの存在を抜きにして考えることはできない。 創設は第二次世界大戦後間もない一九四六年。現在は職員約八千五百人で、米国各地だけでなく海外にも拠点を持ち、新たな病気や感染症などの情報を二十四時間態勢で収集している。アトランタの本部には五千六百人が勤め、所長室や米国立感染症センター、米国立慢性病予防・健康増進センターなど十二のセンター、研究所、事務局があり、全米各地の国際空港や港湾にはCDCの検疫官が常駐している。

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