活況相場の水面下に「泰山グループ」の蠢き

執筆者:川原吉史2003年8月号

「何年も眠っていた個人投資家たちが次々と目を覚ましている」。久方ぶりの活況相場に沸く兜町を歩くと、行く先々でこんな声に出くわす。ソニーのような主力株には見向きもせず、この企業は利益が倍増すると説明しても無関心で、株価が倍になると話したとたんに反応する――そんな「儲け話が三度の飯より好きな資産家たち」(中小証券の営業マン)である。 相場の張り方は半端ではない。信用取引を使って銀行株などを数十万株単位で短期売買することも珍しくなく、一回の取引での利益も損失も数億円単位だ。「都内のある地主は二億円損してもケロリ。あとで三億円儲ければいいと涼しい顔をしている」と、中小証券の幹部は打ち明ける。 なかには複数の中小証券の歩合外務員と秘密の「専属契約」を結ぶ猛者もいる。別途給料を払って外務員を自分の売買注文だけに集中させるのだ。自分名義の携帯電話を外務員に渡し、それで売買手数料の安いインターネット証券に発注させたりもする。「ネット証券経由の売買注文にはいわゆるデイトレーダーに加えて、こうした玄人筋の大口注文がかなり集まっている」との見方がもっぱらだ。これに好機到来とばかりに派手に相場を張る証券会社のディーラーたちが参戦するわけだから、なるほど一日に二十億株を超えるような大商いもこれで合点がゆく。

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