「市場敵視政策」は終わらない

執筆者:2003年8月号

旧大蔵省にとって最も大事な銀行株が売られると、証券会社に注ぐ金融庁の目はとたんに厳しくなる。三十六年にわたって大蔵省出身者をトップに戴く東証も、株式会社になっても「旧大蔵の手先」から脱却できない。 国土交通省とゼネコン、厚生労働省と医薬品メーカー、農林水産省と農協……。善悪は別として、監督する官庁と監督される業界は「持ちつ持たれつ」だ。ところが証券業界だけは、大蔵省がなくなった今も当局の「敵視政策」に耐え続けている。そして、証券会社への冷たい仕打ちの数々は、大蔵省時代から続く当局の「銀行かわいさ」の裏返しでもある。「刑事ドラマの取り調べそのもの」「来年はネット証券だな」。七月上旬、大手経済紙に金融庁・証券取引等監視委員会の求人広告が掲載された。募集条件には株式ディーラーや営業経験者と並んで、「インターネット取引に関するシステム関連等の専門的知識及び実務経験」とある。今回採用されれば、十月から霞が関勤務が始まる。契約期間は「数カ月」の非常勤扱いだが、過去に実務経験者として採用された四十八人のうち四十六人が常勤職員に昇格し、重要な戦力に育っている。監視委の告発はこれまで営業現場での不正行為や株価操縦が中心だったが、ネット証券からも検査官の増員に応じた「成果」が出てきそうだ。七月十一日に日経平均株価が今年最大の下げ幅を記録したのは、金融庁がホームページにネット証券への規制強化案を公表したことも一因と見られる。

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