「危機」か「転機」か、盧武鉉の九月

執筆者:黒田勝弘2003年8月号

「試行錯誤」と言えば聞こえがいいが、アマチュア政治は混乱の極み。労組の甘やかしにも批判の声が高まっている。韓国大統領は果たして豹変できるか?[ソウル発]出発当初から「左派疑惑」あるいは「反米疑惑」が取り沙汰されてきた韓国の盧武鉉政権は、対米関係など外交においては「米韓同盟確認」など、それなりの現実主義路線で内外を安心させた。しかしその外交においても、政権の内情は必ずしも安定的ではない。 たとえば盧大統領は五月の訪米では「これまで米国の韓国に対する支援が無ければ自分は今ごろは政治犯収容所にいただろう」などといった、数多くの親米的発言で米国世論を安心させた。米国の支援・協力がなかったなら韓国は北朝鮮によって共産化され、自分は政治犯として囚われの身になっていただろう、自由民主主義国家・韓国の存在は米国のお陰だ――というわけだ。 ところが実はあの時、盧大統領は訪米から帰った後、韓国のジャーナリズムでは反米・親北朝鮮の論調で知られる「ハンギョレ新聞」とのインタビューで、親米発言の真意をたずねられて「米国にはサービスし過ぎた」と発言しているのだ。 これでは信用されない。米政府が盧政権に対し依然、不信感を持っているのはこうしたことがあるからだ。六月の対日外交をめぐっても、かたちは違うが似たようなことがあった。

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