世論調査政治の胡散

執筆者:2003年8月号

 小泉内閣の支持率は、内閣発足後二年三カ月近くたったいまも五〇%前後で、歴代内閣と比較すると、驚くべき高さだという。だから九月の自民党総裁選は亀井静香が出ようが野田聖子が出ようが、勝負にならず、プロ野球でいえばシーズンが終わる間際の消化試合のようなものだと、知り合いの新聞記者が鼻をひくひくさせながら得意げに解説する。 どれどれ。ちょっと世論調査とやらを研究してみよう。そういえば、どうしてこうも頻繁に、しかもほとんどの新聞やテレビが世論調査をするのだろう。わけしりに聞いてみたら、そのことによって何か傾向をつかむ、というよりは、こういうお金のかかる仕事をきちんとこなしている立派なメディアなんですよ、決して金もうけ目当てなんかではありませんよ、と世間を欺くためにやるらしい。「一致団結箱弁当」は自民党橋本派の結束の固さを示す言葉だが、マスコミの横並び思考は、それに勝るとも劣らない。そのせいか、または偶然なのか知らないが、似たような数字が並ぶ。まずW. リップマンの『世論』という名著を読んでみる。いいことが書いてある。「新聞は一日二十四時間のうちたった三十分間だけ読者に働きかけるだけで、公的機関の弛緩を正すべき『世論』と呼ばれる神秘の力を生み出すように要求される。新聞もしばしば誤ってそんなことができるかのようなふりをする」。

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